CD Essay

好きなアルバムを1枚取り上げて語れるだけ語るブログ

José Jamesは『Love In A Time Of Madness』でまた前と違うことしてるけど超良いから文句はない

ラヴ・イン・ア・タイム・オブ・マッドネス

 

15年に1人の逸材

Love In A Time Of Madness - Spotify

世界的DJにGilles Peterson (ジャイルス・ピーターソン) という人がいる。DJやりながらラジオパーソナリティやって良いアーティストを見つけたら紹介していたらレーベルの社長になった人だ。この人の会社に所属していたのは Jamiroquai とか Incognito とか、まあ豪華だ。良いアーティストを見つける凄い人だと思ってくれて構わない。

その彼が「15年に1人の逸材」って言ったのが今回の人、José James (ホセ・ジェイムズ)である。日本だとホセで通ってるが正しい発音はホゼらしい。15年ってのがやけに生々しいし、言ってる人も相まって信憑性の高さが凄い。

今回はホセの2017年の新作『Love In A Time Of Madness』にしよう。

 


José James - Always There

 

たぶんめっちゃ負けず嫌い

ホセ・ジェイムズ - Wikipedia

この人が話題になったのはおそらく2013年の『No Beginning No End』からではなかろうか。めちゃくちゃおしゃれだった。良い感じに憂いのある声と綺麗でおしゃれな演奏。高音から低音まで綺麗で説得力がある声。ジャズに基軸を置きながら多種多様な音楽から影響を受け、当時の流行に落とし込むセンスは素晴らしいの一言である。そのうち取り上げたい。

言うこと無しの名盤なのだが、意外にも少数ながら批判が出た。「これならディアンジェロでよくね?」である。アルバム全体を通してディアンジェロ感があるかと言われると微妙だが、しかし確かに1曲目なんてわりとディアンジェロがやってそうな感じがある。音のバランスも似ている。不幸なことに起用してるミュージシャンも共通している。どうしたって名前が上がってしまう偉大すぎる先人である。

しかし、恐らくこの批判がホセに火を付けたのだろう。

続く While You Were Sleeping で急にロック調のエレクトロになった。おしゃんなジャズかと思いきや歪んだギターでお出迎えである。前作の影を微塵も感じない。批判に対するブチギレとも取れる痛烈な返答である。振り切れた感がありながら挑戦的で魅力的だ。誰もディアンジェロなんて言葉を出さなくなったのは言うまでもない。

その後も Yesterday I Had the Blues: The Music of Billie Holiday ではジャズシンガーのビリー・ホリデイのトリビュートをしている。全曲カバーでオールドスタイルなこてこてのジャズだ。夜にウィスキー飲みながら聴くと最高。部屋に女の子が来た時にこっそりかけてたらカッコイイって言われること間違いし。

毎回やることが違う。しかも毎回良い。

そして、今作ではR&Bだ。

 


José James - Live Your Fantasy

 

静かでありながら説得力がある

R&Bも色々あるが基本的にイメージして欲しいのは久保田利伸とかである。あれがR&Bの典型に近い。今回ホセがやったのがこのR&Bスタイルである。

もちろんジャズを基軸に置いているがかなりR&Bに寄っている。静かな部分はジャズっぽいが盛り上げ方なんかは非常にR&B感がある。

おかげで成金のイケイケっぽいとかいう批判も生まれた。なんならちょっとブルーノ・マーズが見え隠れしなくもない。けど、そういうイケイケな感じはシングル曲の『Live Your Fantasy』だけじゃないかと個人的には思う。この曲が目立つから言われても仕方ないとこはあるけど、これだけでホセの評価を決めるのは浅はかだ。

以前からそうだがホセの声は静かだ。全体的に静かでジャズっぽくありながら要所でR&Bっぽい歌い方を交えている。落ち着いてゆっくり聴きたくなる感じだ。張り上げない声でここまでの説得力は素晴らしい

リズムもR&Bだが打ち込みも相まってエレクトロ感がある。ブレイクが入ってくる感じは特にエレクトロ感があって気持ちいい。完全に無音になるブレイクが要所で挟まれるのだが、これが良い刺激になっている。どことなくEDMも感じるだろう。

 


José James - To Be With You

 

色んな顔がある男は嫌いですか? 

色々な役ができる俳優をカメレオン俳優という。となるとホセ・ジェイムズはカメレオンミュージシャンだろう。これだけ毎回やることが違うのに毎回高いクオリティで整えて来るのは流石としか言いようがない。それでいてホセ・ジェイムズとしての個性を失っていないバランス感も素晴らしい。リリースの早さもなかなかだ。

親日家なのだろう、しょっちゅう日本に来ている。椎名林檎とコラボして日本語で歌ったりトランペット奏者の黒田卓也を起用したりもしてる。今回のアルバムも日本盤を先行発売している。粋な図らいである。

これからもまだまだ楽しませてもらおう。

 

ラヴ・イン・ア・タイム・オブ・マッドネス

ラヴ・イン・ア・タイム・オブ・マッドネス

  • アーティスト: ホセ・ジェイムズ,ホセ・ジェームス,WONK,T.ビリッグ,S.ジャコビー,Z.ウィルソン,J.シンガー
  • 出版社/メーカー: ユニバーサル ミュージック
  • 発売日: 2017/02/15
  • メディア: CD
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