人生に疲れてた時にBECKの『Morning Phase』を聞いて泣いた話をしよう
新作はまだですかー
BECK。このスペルは音楽好きなら否が応でも反応するスペルだ。世界三大ギタリストのJeff Beck。そしてBECKの名で活動しているBeck Hansen。この2人の名前から取ったハロルド作石の音楽漫画『BECK』なんてのもある。音楽好きならどれかは好き。一般知名度が一番高いのは漫画な気もするけどね。アニメも実写映画もあったし。
今回はBeck Hansenの方だ。新譜出すって言いながらいつまでも出さないBECKだ。2015年リリースって言ってたら2016年に延期なって気付いたら2017年の春に出すって言ってた。まだ出てない。梅雨明けたね。9月はU2とツアーに出るらしいよ。おい。
さて、管理人は彼が3年前の2014年に出した『Morning Phase』が凄く好きだ。最近聞き直してやっぱり凄く好きだった。同時に初めて聴いた時の感動を思い出した。タイトルにもある通り、泣いたってことなんだけど。あの時なんで泣いたのかを語ってみようと思う。
唯一無二のBECKという音楽
先に言っておこう。このアルバムが2014年のグラミー賞の最優秀アルバム賞だ。主要4部門のやつ。ちなみにロックアルバム賞も獲ってるけど、これロックか…?っていう違和感を感じたのも覚えてる。なんならColdplayはポップ扱いだったからね。線引きが謎。ちなみに、この年はSiaが『Chandelier』を出して無冠だった年でもある。ほんと謎。
BECKの音楽は常に面白い。
ルーツが幅広いのだ。フォークを基本に感じさせながらロックはもちろんブルースやカントリー、ヒップホップの影響も見える。あとサイケとかガレージとかもいる。BECKの素晴らしいところは数多のジャンルから影響を受けていることは分かるんだけど、そのジャンルに染まりすぎずにBECKの個性を保っていることだ。
平たく言えば最近流行りのクロスオーバーではあるのだが、この人ほど新しいことに物怖じしない人はいない。クロスオーバーってどこかクロスオーバーっていうジャンルを感じさせるとこあるじゃん。ある種の定型としてクロスオーバーらしさみたいなのがあるじゃん。BECKには定型が一切ない。常に新しい音楽をしようと試みているし、あっさり過去作のやり方を捨てるのはもはや狂気すら感じる。でもこういうのこそポップという称号を得るべきなんだと思うけどね。
さて、今作はBECKの過去作である『Sea Change』と製作手法が同じである。
これも超名作。父であるDavid Campbellがオーケストラの指揮を行いアレンジも手掛けている。だから雰囲気は似てる。だけど、ストーリーとしては別なので続編というわけではない。単純に昔似てるのを作ってたというだけだ。ちなみに、続編って言うとBECKが怒るらしい。
全ての音が美しく優しい
出て来る音はBECKの声とアコギがメイン。それにバンドとオーケストラが彩りを加えている。金管楽器は一切ない。あくまで声とアコギがメインだからベースとドラムはかなり控えめに聞こえる。でもそれがいい。
CDを入れると40秒のオーケストラが流れる。その後にスッと入ってくるアコギのEメジャー。ミ・ソ#・シ。ギターを始めて1週間で弾けるようになる超簡単なコード。なのに、ここまででもう恐ろしく美しい。溜め息が出そうになるほど美しい冒頭だ。そのあともそこまで変なコード進行じゃない。1,2弦の開放を鳴らしながらⅠ→Ⅳ→Ⅲ→Ⅱと降りていくだけ。そこまで革新的なコード進行ってわけじゃない。初心者でも3ヶ月もあれば絶対弾ける。
なのに。なんでこんなに感動するんだ。
この時点でまだ聞き始めて1分経ってないし、なんならBECKは一言も言葉を発してない。でも、管理人は既にこのCDの虜になってた。今まで生きてきてここまで心を打たれた美しいEメジャーはない。こんなにも簡単でなんの捻りもないコード進行で胸がキュッってなるなんて。
そうこうしている内にBECKの声が入ってくる。隣りに寄り添い包まれるような優しく美しい声。もう鳴ってる全ての音が美しくて優しくて暖かい。もうなんか泣きそうになる。っていうか初めて聴いた時ちょっと泣いた。ごめん嘘、ほんとはすごい泣いた。
いやね。疲れてたの。ちょっと精神的にしんどいなって思ってた時期だった。そういう時になんか話題になってたから聴いた。そしたら何言ってるのかも分かんないのに勝手に慰められてるような気がして。あまりの美しさと優しさに柔らかな温もりすら感じて。もう抱きとめられたような気すらして。すごい泣いた。ひとりで夜中にすっごい泣いてた。うわっ恥ずかし。
まあ後で歌詞を眺めてみたら、当たらずといえども遠からずって感じだった。最初の曲で朝起きて一日過ごして最後の曲でまた夜明けが来る。 恋人と別れたりでなんか辛いこととかあるんだけど、結局最後はまた朝が来てちょっと頑張ろってなるみたいな。もうなんか…うん…めっちゃ良い…。
感動して泣いたってことしか書いてない
音楽を紹介するブログとしては完全に敗北だと思う。もうだって良いとしか言ってない。その良さを音楽的に解説した文章にしていたのがCD Essayなのに。しかも語彙力も乏しい。これ、もしかして恥ずかしいだけなのでは…?
でも、これがこのアルバムを勧めるのに一番良い言葉なんじゃないかと思う。このアルバムほど優しい作品は他にない。疲れてる時に優しく寄り添ってくれて。励ましてくれて。それでちょっと元気になる。それを音だけで成し得ている。
それができるだけの美しさと優しさがこのアルバムには溢れている。