CD Essay

好きなアルバムを1枚取り上げて語れるだけ語るブログ

Becca Stevensの新作『Regina』があの前作を上回る最高傑作だった

Regina

 

あまりにも名作で驚いた

Becca Stevensという人を知っているだろうか。NYで活躍する女性シンガーだ。NY Times曰く、NY最良の秘宝らしい。最良なら秘密にせず打ち出せよって思った。系統としてはジャズとかフォーク、カントリーとか。ブルーグラスとかアイリッシュとかもあるかも。それらをポップにまとめている。

今年の3月に新作『Regina』を出していたのだが、これが驚くほどの名作だった。管理人のどツボにハマった。こういうの大好き。ということで語る。

 

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やっぱりGroundUPに移籍した

ベッカ・スティーヴンズ - Wikipedia

日本語のWikipediaがある…意外と知名度あるのかな…管理人の周りでこの人が有名だという認識は全くない。Jazz The New Chapterに取り上げられてるってくらい。あの雑誌面白いよね。

まあでも、ほどほどに説明しておこう。この人はシンガーなのでもちろん唄は上手いのだが、ギターが良い。それもそのはず、ちゃんと音大出てギターを勉強してた人だ。専門はクラシックギターだ。クラシックギター以外ももちろん弾く。普通のアコギにウクレレとか、あとチャランゴっていう10弦のちっちゃい弦楽器とかも弾く。

それもあってベッカ・スティーヴンスはアコースティックな手法が多い。予め言っておくが、日本のアコースティックギターを弾きながら歌ってる女性のシンガーとは全く違う。君と100回目の恋とかもしないし嘘を愛しすぎてるわけでもない。この人種ってドラマとか映画とか出がちだけど、なんで片っ端から恋愛で脳味噌溶けてる系の作品なんだろうね。だいたい若手俳優はべらかしてるけどファンはそれで良いのか。

もちろんこの系統のポップで明るいミーハー向けの曲では断じてない。もっと芸術的に美しさを求めてる感じだ。

ベッカ・スティーヴンスが有名になったのは1stアルバムの『Weightless』だろう。アコースティックな音に緻密なコーラスワーク。ミニマルで美しくまとまっている。ぜひ聴いて。これもこれでめっちゃ良いから。めっちゃ才女って感じするから。

そんな彼女の新作だが、GroundUP Musicから発売だ。詳しくは記事を書いた。

Snarky Puppyが来日してるけど、この人達が立ち上げたレーベルがめっちゃ凄いことになってるって知ってる? - CD Essay

ヤクザレーベルである。Snarky Puppyの『Family Dinner Vol.2』に参加したんだが、それ以降やたらと一緒に作業してるなあと思ったら案の定移籍した。他のレーベルがかわいそうだ。

 

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現代的手法によって壮大でさらに芸術的に

今までのベッカ・スティーヴンスの作品はアコースティックを押し出してミニマルながら美しい世界を作っていた。しかし今回はかなり壮大だ。もちろんアコースティックをふんだんに盛り込んでいるのだが、遥かにスケールが大きくなっている。リバーブのかかり方がこれまでと全然違う。広がりを感じる、深いリバーブだ。世界観の大きさが全く違うかなり芸術的だ

でも決して難しいという印象はない。芸術を追い求め過ぎて分からないということはない。ちゃんとテーマに乗せていたり盛り上がりも展開も分かりやすい。でもしっかり芸術的な面を打ち出している。

そのためかアコースティック一辺倒でもなくなった。ベースはもちろんエレキギターも鳴るし、ストリングスも増えたしエレクトロっぽい音も鳴っている。これまでより音楽的な幅は広がっている。でもアルバム一枚を聴ききった時の感想はアコースティックな印象が残るからやっぱりバランスが素晴らしい。

そしてコーラスワークが素晴らしい。昔からコーラスは素晴らしかったんだけど、今回はJacob Collierが参加しているからだろうか。ジェイコブらしい派手なコーラスもありつつ、基本的に美しくまとまっていて文句の付けようがない。かなり緻密に作り込まれたコーラスラインだ。頭良いってなる。和音のつくり方が本当に素晴らしい。

かなり現代的な手法だと思う。普通のリズムパターンではなかったりシンセベースを使ってみたり左右に大胆に振ったPANなんかもかなり現代っぽい。でもアコースティックな印象にきっちり落ち着けているから凄い。技アリ。この辺がマイケル・リーグの仕業だろうなと思う。

そしてやっぱりこの人の声は良い。安心する。聴いてて癒される。良い声だ。 ゲストにDavid Crosbyがいる。相変わらずこのお爺ちゃんも良い声だ。癒やし効果が凄い。でも、その裏できっちりシンセベースが鳴ってたりストリングスが鳴ってたりするからただの癒し系ではない。もっと遥かに芸術的なアプローチだ。

 

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ウクレレと声だけで4分聴かせられるって凄すぎる(後半4分はインタビュー)

 

驚くべきことに最高傑作になった

超名盤だと思う。個人的な好みもあるけど、2017年から何か選べと言われたら今はとりあえずこれが入ると思う。まだ8ヶ月あるけど。でも4ヶ月過ぎた時点でこれが一番好き。単純に好き。

物凄く充実した作品だと思う。ベッカ・スティーヴンスはリリースされる度に前作を上回る作品を出していたが、今回も今までより良い。今までの作品ももちろん良いし前作の『Perfect Animal』は管理人の愛聴盤のひとつだ。しかし驚くべきことに今作はそれをさらに上回る作品だ。正直前作が良すぎて上回るなんてことはないと思っていた。でも今作はさらに良い。彼女の新たな魅力を強烈に発信しつつしっかりとこれまでの良さも出している。素晴らしい。

7月に来日するらしい。行きたい。

 

レジーナ

レジーナ

  • ベッカ・スティーヴンス
  • ジャズ
  • ¥1500