今のFourplayがめちゃくちゃ調子良いって伝えたくて仕方ない
スムース・ジャズの大御所
Fourplayというバンドをご存知だろうか。27年間スムース・ジャズを牽引し続けている大御所スーパーグループである。ただ、キャリアの長いバンドというのは「いつも通り」を続けて面白みがなくなるというのが世の常だ。だんだん初期の良さが無くなって気付いたら誰も相手にしないというやつだ。
しかし、最近のFourplayがやけに良い。知ってほしい。今回は2015年に発売された13枚目、現時点では最新のアルバム『Silver』を語ろう。
どのギタリストが好きか論争
現メンバーBob James (Piano)Nathan East (Bass)Harvey Mason (Drum)Chuck Loeb (Guitar)過去メンバーLee Ritenour (Guitar)Larry Carlton (Guitar)
名前を見てわかる豪華さ。ちなみに27年前の結成段階でもスーパーグループ認定できるだけのキャリアを持ってた人達だ。今見たら凄い人達なのではない。昔から凄い人達だ。分かりやすいとこで言うとベースはEric Claptonの後ろで弾いてた。ドラムは日本が誇るフュージョンバンド、カシオペアのプロデュースとかしてた。基本的に凄い人しかいない。
このバンドはギタリストの在籍に合わせて3つの時代に分けて語られることが多い。古い方から順にLee、Larry、Chuckだ。ちなみに、別に喧嘩別れしたとかではなく他の仕事が忙しすぎて暇がないから、というのが交代理由だ。このレベルの人達が集まっているのだから当然の理由である。というか他のメンバーが変わってない上にアルバムを2年に1枚程度のペースで出し続けてる方が奇跡的だ。
他に変化が全く無いのも相まって、このギターの違いが話題に上がること多い。要は誰が好きかだ。と言っても他のパートは変わらないし、その3人のギタリストも大きな括りで見れば全員ジャズギタリストなので凄く微々たる違いだ。大きな差があるというわけではないが、せっかくだしざっくりとした違いを音楽的に説明しよう。
Lee期は最も若く、バンドとしても成長途中ということもあって若々しい曲が多い。様々な工夫を凝らし退屈しないスムース・ジャズを展開している。また、セッションで意気投合してバンド結成に至ったという経緯も頷けるくらい個々の音の調和が取れている。かなりジャジーで洗練されている。軽やかだ。
対してLarry期はバンドも安定し落ち着きがある。その落ち着きの中でLarryのギターが冴えることが多い。他の2人に比べかなりブルースよりの熱いソロを展開することが多い。曲としては落ち着いてるのだがソロは熱いというバランスだ。かなり主張してくるソロだ。Leeの軽やかさとは違う、しっかりと聞かせてくるソロが多い。
そして現在のChuck期に入る。
「誰だよ、チャック・ローブって」
そこまで無名な人ではないが、他の2人と比べると明らかに小物感はある。たぶんジャズギタリストを熱心に追ってるギタリストぐらいしか認知してなかったんじゃないだろうか。というかLeeとLarryが大物過ぎるんだよね。
例えるならLeeがコカコーラ。Larryがジンジャーエール。で、Chuckがトニックウォーター。トニックウォーター?なにそれ?ってなる人がいても仕方ない。確かにコンビニにはあまり置いてない。
しかし、結論としては大正解だと思う。
Fourplayとして磐石なところにキリッとした苦味。甘すぎず爽やかな音。これが見事に溶け合って良い。主張しすぎず、かと言ってソロがダレるようなことは決して無い。
どちらかというとフレーズはLeeに似ているのだが、Leeより更に軽やかだ。というかジャズし過ぎてない。そして音色が明らかに他の2人と違う。だが、これが一番バンドに上手く溶け込んでいるのではないかと感じる。
バッキングが特に良い。他の人のソロになった時に、いないのでは?というくらい綺麗に下がるのだが要所で少しずつ顔を出して彩りを加えている。これが賢い上にセンスが逢ふれたプレイだ。
無難すぎるという意見もある。確かに彼のソロは他の2人のような強烈な個性みたいなものは無いかもしれない。ギタリストが見るとやっぱり残念なように映るのかもしれない。ただ、作品全体を見渡せばクオリティは間違いなく上がっている。立ち回りが上手い。こんな有能だったのかと驚いた。今作はそうした点が綺麗に現れていて本当に感心する。
いぶし銀のよさ
ちなみに今作ではゲストにLeeとLarryがいる。結局いるんかいって感じだが両者ともなかなか良い雰囲気で弾き合っている。ソロになるとやっぱこの2人すっげーってなるが、その後ろでかなりセンスあるフレーズを弾いててやっぱChuck良いじゃんってなる。そういうのもあるからヘッドホンの方がしっかり聴き分けできて楽しいと思う。当然だが、他の3人もすこぶる良いぞ。
あと、今回はジャケも良い。7枚目の『Heartfelt』から急にメンバーの顔が主体のジャケになりだしたんだが、個人的にはその前の芸術的なジャケが好きだ。ということで今作はジャケも好き。
静かな夜に是非。気付いたら楽しくなる仕掛けがふんだんに盛り込まれたおすすめの1枚だ。