Kris Bowersは恐ろしく挑戦的な上に基盤がある秀才であることを『Heroes + Misfits』で示している
クロスオーバージャズの若手ピアニスト
今回は若手がひしめくクロスオーバージャズの中でも最も盛り上がりを見せているジャズピアノから紹介しよう。Kris Bowers (クリス・バワーズ)である。恐らくマイナーな人だろう。ジャズピアノの界隈では有名だが、界隈でしか有名ではないんじゃないだろうか。しかしこの人の才能はここで終わるべきではない。そう思って筆を執ったわけだ。
管理人が期待するきっかけとなった1stアルバム、『Heroes + Misfits』を語ろう。
エリート街道のド真ん中
上の動画を観てもらえば分かるだろう。ジャズピアノの歴史を10分で総ざらいするという教養に溢れている動画だ。ピアノだけじゃなくてキーボードも入ってる。ジャズが好きなら絶対面白いので一見の価値はある。というかこのシリーズが面白いからおすすめ。
このピアノがクリス・バワーズである。教養に溢れている。そして上手い。あと体がでかい。なんか大きさの感覚が狂うくらいにでかい。
そう、この人は教養に溢れているのだ。
ジャズはもちろんだがクラシックの素養もある。というか他のジャンルへの理解が深くそれらのバランス感覚が凄い。もともと親にクラシックをやらされていたらしいのだが、ピアノやめるって脅してジャズに転向したらしい。クールだ。
で、ジュリアーノ音楽院を修了して若手の登竜門かつ通過儀礼のセロニアス・モンク・コンペティションを優勝と。エリート街道まっしぐらでいけ好かないが、本当に秀才で勤勉だから何も文句は言えない。
教養が深い人にしかできないと言われる映画音楽の仕事もしているらしい。残念ながらまだ映画自体のヒットに恵まれていないのだが。
Kris Bowers - Forget-er (feat. Julia Easterlin)
若々しく挑戦的
さて、そんな彼のソロアルバムだが、かなり挑戦的だ。
系列としてはRobert Glasper系のクロスオーバージャズなのだが、より遊びを感じる。ギターが普通に歪んでいる。ジャズギターではないのは間違いない。あとピアノとキーボードを一緒に使うことになんの抵抗もない。
ジャズよりのポップスだと思ったほうが良いかもしれない。ちなみに、もともとポップスの基礎理論はジャズである。ジャズができればポップスもできるみたいな部分はある。それでもジャズしかやらない人がいるからジャズは魔窟と言われる由縁だが。
この何でもできます感はかなり頼りになる。フットワークの軽さを見ているとジャズに限らずどっかで成功する気がしてならない。
このアルバムにはゲストも多い。というかボーカルは全員ゲストだ。先日紹介した José James がいる。相変わらず渋い。こういう繊細なボーカルの後ろで綺麗にソロが取れているのだからやはり上手い。あとChris TurnerとJulia Easterlinがいる。3人とも3人の個性がしっかり出ていて面白い。むしろよくこんなに個性にあった曲を用意できるなと感心する。
Kris Bowers : Wake the Neighbors (Live at Bootleg Bar)
チェックしない手はない
1989年生まれ、こないだ28歳になったところだ。若い。ロバート・グラスパーが39歳だから一回り違うわけだ。もちろんキャリアも違うが持っている素養は近いものがある。若々しさもあってか楽しんで聴ける作品だ。こうした才能が今後なにをしてくれるのか、楽しみである。
上のライブ動画なんてもう原曲と全然違うしな。こういうとこジャズらしくて良い。なんだかんだジャズの精神はちゃんともってるのは好感が持てる。
最近はホセ・ジェイムズはもちろん、黒田卓也とも仲良くしているらしく、ピアノとして参加している。この界隈の協力姿勢は本当に素晴らしいと思う。
ともあれ是非チェックしてもらいたい才能だ。近い将来この人を中心にシーンを語る日も来るかもしれない。