CD Essay

好きなアルバムを1枚取り上げて語れるだけ語るブログ

2017年の音ってなんだ?『今っぽい』を紐解こう

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ずっとズルしてたから説明します

最近のCDを聞きながら『今っぽい』という言葉をよく使う。使ってしまう。だってラクなんだもん。
ただまあ、優しくないなと。どんなのが今っぽいのか説明してないし。ズルしてたと思う。
今回はこの『今っぽい』を紐解こう。
今売れている音楽によく使われている手法を解説しながら今っぽさを説明したい。
ちなみに、日本の今っぽいに関しては一切関与しない。全て海外についてだ。日本については他がやってる。あえて管理人から一言だけ言うなら、日本はリツイートされるかどうかが全てだ。
 
 

今っぽい兄さん代表、Bruno Mars

例にBruno Marsを選んだ。多分あってる。はず。
もともと彼はおしゃんに歌ってた好青年キャラだったのに気付けば周りにゴツい黒人を引き連れてウェーイってやってる人になってた。どう見ても金持ってる。
でも、こういう人の方がシビアに今の売れ線を分析しているので分かりやすい。現にこの曲は非常に今っぽい。彦麻呂もびっくりの今っぽさの宝石箱だ。
 
まず知ってて欲しいのが時系列。今というのはEDMのどんちゃん騒ぎから正気に返ったところだ。いくらなんでもバカ騒ぎし過ぎじゃね?って気付いてしまったわけだ。酔いが冷めた感じ。俺たちもうちょっと色々工夫されてる曲のほうが好きだなってなってるわけだ。
ということでだいぶ複雑化してる。反動というやつだ。
 
わかりやすいとこだとコーラスだ。めちゃくちゃ複雑になってる。従来は3度上で歌って声を厚くしておけば良かった。ちょっと歌が上手くないアイドルなんか常に3度上にコーラスが入ってたりする。でも今はそんなもんじゃなくなってる。5度や6度、9度あたりもいる。要するにやけに難しいラインでコーラスを入れることがかなり増えてる。ここが編曲家の腕の見せ所みたいになってる。
そもそもコーラスが重厚になってることもある。人数が増えてるのだ。コーラスだけでコード作って曲の進行をすることだってある。声楽みたいなことをしているのだ。
もうひとつ声について言及するとボーカルエフェクトが積極的に掛けられてる。Daft Punkが再びブームをもたらしたトーキングモジュレーター的な音はまだ流行ってる。流行ってるというか定番の手法になってる感じがする。ハーモナイザーの使用も一般的だ。声をひとつの楽器として見ている風潮がだいぶ強まっていると言える。
 
楽器の違いだとシンセが変わった。楽器としての存在感が明らかに増している。これまではレコーディング限定でライブになったらいないなんてことはよくあったが、シンセを主体に曲を作っていることが増えているため楽器として台頭していることが増えている。
シンセに使える音は無限とも言えるので曲の方向性が広がっているとも言えるだろう。ベースシンセとかだいぶ存在感が増してる。最近のベーシストはベースシンセも弾けないとダメなんじゃないかって感じがする。いわゆる弦楽器のベースは減ってきている印象がある。エレクトロっぽい打ち込みっぽい感じが好まれているのだろう。
それを踏まえて聴いてみると、やっぱりブルーノ・マーズは今っぽい兄さんだ。
 
 

ジャンルの垣根の無さ

ジャンルはもうクロスオーバー全盛期だ。一辺倒のロックとかポップスなんて見向きもされない。まだギター弾いてんの?って言ってぶち切れられたバンドマンがいた気がするが、ただギターが弾けるだけだったらなんの価値もないのは間違いない。

Robert Glasperのいるジャズ界隈は特に顕著だ。もはやジャズじゃないなんてことがよくある。ソウルとかR&Bとか吸収できるものはなんでも吸収しているところがある。ヒップホップも積極的に他のジャンルを取り込んでる。Kendrick Lamarとか。ロックはなぜかロックから出ようとしないから今は下火だったりする。あと、最近はワールドミュージック系が人気だ。Marcus Millerの新譜なんてかなりアフロサウンドだった。ビートは相変わらず4つ打ちが多いが、ワールドミュージックを取り入れてリズム楽器がパーカッションだけ、みたいなことにもなってる。

ちなみに、技術的には下手なのは論外だ。最近は下手なアーティストが一切出てこなくなってる。Nirvanaとか今だと見向きもされないだろう。高品質であることを求めているから、演奏の粗だったり、俗に言う"味"と言われるものはほとんどない。基本的に売れてるのはどいつもこいつも上手い。ただ、上手いメンバーがいてもあまり上手いのをひけらかさないことの方が多い。スタイリッシュにキメているのだ。ものすごい速弾きとか一部のジャンルでしか聞かなくなった。
 
 

たぶん今の風潮ってこんな感じ

別に管理人はただの音楽好きであって、これからの音楽シーンがどうとか予想をしているわけではない。まあ恐らく今年もこの流れを引きずるとは思うけど。ただ、たまにこういう流れから大きく外れた突然変異が流行ることがある。それでも話が違うって責めないで欲しい。というか、個人的にはそういう突然変異はだいたい面白いから待ってるとこがある。
個人的には今のクロスオーバーの流れはセンスが非常に試される感じがするので大歓迎だ。新しさもある。特にジャズ界隈のそうした新人が多くてかなり面白い。ある映画でそういう先進性を求めることを嘆いていたシーンはあったが、個人的にはそれが面白いと思っている。あと下手だけど味があるみたいな音楽に関しては、「なに言い訳してんだ練習しろ」って思っちゃうとこがあるから今の実力主義的な側面も好き。
 
まだまだ音楽は面白いぞ。