CD Essay

好きなアルバムを1枚取り上げて語れるだけ語るブログ

GoGo Penguinは"あの系譜"のピアノトリオになり得ることを『MAN MADE OBJECT』で示している

MAN MADE OBJECT

 

マンチェスター発、今度のゴーゴーはペンギン

MAN MADE OBJECT - Spotify

昔からゴーゴーって名前はよくある。日本のガールズロックバンドの先駆者だった Go!Go!7188 から最近の若手バンドだと go!go!vanillas がいる。海外には80年代に The Go Go's っていうガールズバンドがいたし Whisky a Go GO っていう老舗の有名なクラブがある。たぶんどこの国でもゴーゴーっていう語呂は良いんだろう。カレー屋もあるし。

そんなゴーゴー界隈でも管理人の一押しが GoGo Penguin (ゴーゴーペンギン) である。名前がポップ過ぎる。ゴーゴーがポップだから7188っていうちょっと不思議な数字だったりウイスキーとかつけてカッコつけてんのに。めっちゃ可愛い。ちなみにビックリマークは付かない。あとGoGoの間にスペースは無い。

今回は2016年に発売した彼らのメジャーデビューアルバム、『MAN MADE OBJECT』から彼らの魅力に迫ろう。

 


GoGo Penguin - All Res (Official)

 

アコースティックなエレクトロジャズ

GoGo Penguin - Wikipedia

Chris Illingworth (Piano)

Nick Blacka (Double Bass)

Rob Turner (Drums)

 日本語版のWikiは無かったので英語で。Double Bass ってのはコントラバスのことだ。ストリングベースとかアップライトベースとも言われてる。ちなみにウッドベース和製英語だから海外では通じない。

アノトリオなんて死ぬほどいる、なんてのは fox capture plan はカルテットの劇伴バンドで終わりにするには惜しいぞ の記事でも触れた。売れるには何かしらに秀でたものがなければならない。

その中で GoGo Penguin が秀でているのはリズムだろう。このドラムがべらぼうに上手いのだがブレイクビーツエレクトロを感じさせる。手数の多さが尋常じゃない。

ベースも面白いことをしている。普通にジャズベースらしく弾いていることもあるのだが、で弾いていることもある。これがエレクトロ感があってなお良い。

そこに綺麗で覚えやすいピアノのメロディである。完璧。

また彼らの拘りだろうか、完全にアコースティックである。シンセや打ち込みは入っていない。エフェクトすら最小限だ。完全にアコースティックから出た音そのままだ。それでこの演奏ができるのだからやっぱり上手い。

 


GoGo Penguin - Branches Break (Radio Edit)

 

スウェーデンの伝説の後継者

ここまで書いてあるバンドが思い浮かぶ人がいるだろう。ピアノトリオの伝説、E.S.T. こと Esbjörn Svensson Trio である。覚えやすいピアノに弓によるベース、手数の多いドラムと似ている点が多すぎる。不運な事故でその幕を閉じた E.S.T. の正当後継者とも言うべきである。まあそもそもピアノトリオをやるのに影響を受けていないはずがないのだが。

だが、こちらの方がより現代的だ。ジャンルのクロスオーバーが進んでいる。裏を返せばジャズ感が薄いとも言える。E.S.T.の方がジャズに根ざしている。GoGo Penguin はアコースティック編成でエレクトロにジャズをしているようにも聞こえる。

現代的な分、こちらの方が今の人としては聴きやすいだろう。fox capture plan からジャズに興味を持った人が次に聴いて違和感なくハマれそうだ。それでいてソロの取り方なんかはきっちりジャズを踏襲しているからまさに入門編にぴったりだ。

 


GoGo Penguin - Weird Cat – Live at Union Chapel

 

更なる深化を期待

イマドキ感のあるジャズだ。若者のなんでも取り込んで自分たちのスタイルにするというのをしっかりと実践できているのは非常に好感を持てる。

まだ全体的に荒いし、作品としての深みでは E.S.T. に及ばないという見方もある。しかし、そもそも比較対象が E.S.T. なのが不運であるし十分なクオリティである。

しかもこれだけできてまだ全員20代。まだまだ上手くなるだろうし期待が持てる。

アノトリオの戦場で生き残れるだけの自力はある。さらなる深化を期待したい。

 

MAN MADE OBJECT

MAN MADE OBJECT