CD Essay

好きなアルバムを1枚取り上げて語れるだけ語るブログ

Animals As Leaders が最新作『The Madness of Many』で方向転換してるって知ってる?

THE MADNESS OF MANY

 

ちゃんと最新作まで追ってる?

The Madness of Many - Spotify

音楽に詳しくない人はギターとベースの違いが分からないらしい。まあ、形とか似てるもんな。そんな人にギターとベースの違いを説明するのはどうすれば良いか。定番は「ギターは高い音、ベースは低い音」ってのだ。あと「ギターは6弦、ベースは4弦」である。これでだいたい片付く。

これで片付かないバンドがプログレッシヴ・メタル界隈の台風の目、 Animals As Leaders (アニマルズ・アズ・リーダーズ)である。今回は彼らの2016年の最新作、『The Madness of Many』を語ろう。

 


ANIMALS AS LEADERS - Cognitive Contortions (Music Video)

 

そもそも Animals As Leaders とは

アニマルズ・アズ・リーダーズ - Wikipedia

Animals as Leaders

  • Tosin Abasi – guitars
  • Javier Reyes – guitars
  • Matt Garstka – drums

知らない人はつべこべ言わずに観てくれ。その方が話が早い。開始数秒で「あ、こいつやべぇ奴だ」ってなる。脅威の速さと重さである。ゴツい。そのわりにどこか儚げで美しい。メタルに付き纏う下品な感じが一切しない。流石である。

Animals As Leaders は3人組のインストプログレッシヴメタルバンドである。プログレッシブメタル。もう名前だけで強い。声がなくて展開が凄くてメタルなバンドである。このバンドは3人組なのだがベースがいない。ギター、ギター、ドラムというキレキレな編成である。

AALはギタリストがベースの役目を担っているのだが、その担い方が凄い。ギターに低音弦を2本加えた8弦ギターである。もうギターじゃねえ。いやギターだけど。ひとつの楽器で低音から高音まで全部出せば良いじゃん、という理論である。なんだそれ。カロリーメイトあればご飯食べ無くても大丈夫みたいな理論やめろ。

ちなみに、現在はレコーディングでならたまにベースを弾いていることがある。ただ基本スタンスはツインギターであるし、ライブではギターしか弾いてない。あれが本当にギターなのかという論争は置いといて。

誤解しないで欲しいのだが、これまでもベースレスバンドはいた。全く同じ編成ということであれば The Jon Spencer Blues Explosion なんかはベースレスのギタートリオである。

 


ANIMALS AS LEADERS - The Brain Dance

 

知的で洗練された快作

今回のアルバムについてだが。圧倒的にアレンジが増した。電子音も増えたしアコースティックも増えた。元々美しくメロディアスなフレーズだったのもあるが、それが強調されてより美しい。速いレガートで弾くアコギフレーズはテクニカルだし特に美しい。ジャンルもただのプログレメタルではなくワールドミュージックやジャズ的なものからの影響が多く見える。音楽的な深まりを感じるし新鮮だ。

彼らの出世作であるセルフタイトルのデビューアルバムは「ベースレスの3人でどこまでできるか」みたいなものを追求していた感がある。とんでもなくテクニカルなのを見せつける名刺のようなものだ。アレンジは最小限だったが、このおかげで個々の良さがしっかりと見えるアルバムだった。

しかしAAL知名度は既に十分に上がりきっている。もうメンバーが上手いことは周知の事実であるし、今更テクニックをひけらかす必要もない。となればアレンジを増やして作品としての品質を上げるほうが良いというのは素晴らしい方向転換であり、賞賛すべきだ。

アレンジが増えたが重厚で無くなっているということはない。後ろできっちり重厚な歪みが刻んでいて気持ちが良い。親指でのパーカッシブなスラップも顕在である。相変わらず上手い。

 


Dunlop Sessions: Animals As Leaders

 

脱皮しない蛇は滅ぶ

原理主義的な思想になると方向転換は良くないということを言う人は多いだろう。我々が求めていた姿ではないという文句だ。もちろん方向転換で失敗する例は多々あるし、失敗する例の方が多い気もする。

しかし、今回のAALに関しては明らかに成功である。元々持っていた個性に磨きをかけた素晴らしい作品であり、この変化が必然にも思える。

1stアルバムで止まっている人にこそ聴いていほしい。

 

THE MADNESS OF MANY

THE MADNESS OF MANY