Salif Keïtaが放った『Talé』は最先端の民族音楽だ
これがアフリカの最先端の音楽
Talé by Salif Keita on Spotify
アフリカの音楽のイメージってどんなのだろう。なんか民族楽器叩いてるイメージしかないだろ。で、ホワァァァアアアア!みたいな声出して歌ってると思ってるだろ。まあ実際そういうイメージでしょうよ。知らなきゃそうでしょうよ。わけわかんない原住民に突撃するテレビとかいっぱいあるもんな。
今回はそんな幻想を打ち砕く記事だ。Salif Keïtaの2012年のアルバム『Talé』が本当に素晴らしいので紹介したい。
ちなみに、サッカー選手に全く同じ名前の人がいたらしい。もちろん別人です。
マリ出身の王族だそうな
まずマリってどこだよ。マリ共和国、西アフリカだって。ほーん。国土の北側3分の1はサハラ砂漠の一部らしい。ハードモードな国だな。ちなみに、Ali "Farka" Touré(アリ・ファルカ・トゥーレ)っていうギタリストを知ってる人はいるだろうか。あの人はマリ出身。アフリカンテイストな演奏をしてワールドミュージック界隈では有名なギタリストだ。ライ・クーダーとのアルバムでグラミー賞獲ったりしてる。欧米風の音楽をやってるっぽく見せかけてリズムが意味分かんなかったりスケールがちょっと面白かったりでなかなかセンスに溢れている演奏をする人だ。ギタリストはとりあえず聴いてみると良い経験になると思う。
あとコラっていう弦楽器が有名かな。ハープみたいな感じで弦を弾いて弾く民族楽器だ。Ballaké Sissoko(バラケ・シソコ)とかToumani Diabaté(トゥマニ・ジャバテ)っていう人達が結構有名。もちろん二人共マリ出身。トゥマニ・ジャバテはアリ・ファルカ・トゥーレとコラボしてアルバム出してグラミー賞を獲ってる。バラケ・シソコはグラミー賞こそないけどチェロと一緒にやったアルバムの癒やし効果が高いって話題になったことがある。エレベーターミュージックだけど流してると癒やされて良い感じ。
さて、サリフ・ケイタはそんなマリの王族だ。生きてきて王族って単語を使うとは思わなかった。石油王より強い。養ってくれ。でもこの人はアルビノで生まれてきた。体の色素が薄い病気。これのせいで王族を追放されてる。不遇すぎる。
それから音楽を生業にして世界的に人気のアーティストになったというわけ。凄い。
圧倒的な声の力とエレクトロの現代感
サリフ・ケイタは声が良い。英語ですらないから何言ってるかさっっっぱりわかんないんだけど、声が良い。迫力のある低音から伸びやかな高音までずっと良い。なんか良い事言ってんだろうなって思わせるくらい説得力がある。
かつ音楽性が新しい。基本のリズムを民族楽器で担っているのも新しいし、数多くの民族楽器でメロディを構築している。だがそこにエレクトロの要素まで加えている。ただのワールドミュージックではないのだ。
恐らくただ民族楽器で歌うだけならここまでの人にはならなかっただろう。サリフ・ケイタが素晴らしいのはそのエレクトロの部分だ。アコースティックな響きのある民族楽器で下地を作っておきつつエレクトロで飽きない構成にしている。もともと民族楽器はハマれる人にとっては踊れる曲だが、わからない人には乗りにくい音楽だ。それをエレクトロで分かりやすい拍に落とし込むことで誰もがノれる曲になっている。もちろんそれが安易なやりかたではなく民族楽器の良さが削られない最小限の工夫であることも好印象だ。
特に今作はそのバランスが素晴らしい。近代的なエッセンスを存分に交えながら民族楽器のアコースティック感も楽しめる。そもそも使われているメロディも一癖あるからずっと楽しく聴くことができる。一癖あるのに初めて聴いてもスッと馴染む。西洋音楽の取り入れ方が本当に上手い。「普通過ぎて飽きが来る」と「捻りすぎて敬遠する」のちょうど真ん中。ここしかないというポイントをしっかり付いている。その上で声の説得力が乗るのだからずっと聴いてられる。素晴らしい。
ゲストも豪華。ラッパーのRoots Manuvaや世界最高のヒューマンビートボクサーのBobby McFerrin、我らがEsperanza Spaldingも参加している。あと娘のNatty Keitaも参加してる。ちゃんと歌ってる。声がロリロリしてて可愛い。めっちゃロリ声でJe t'aimeとかI Love Youとか言ってる。喜べ男共。
革新的な民族音楽
ワールドミュージックや民族楽器と言われて浮かぶイメージを少しでも払拭したい。そう思って書いた。世界的に見ても最先端と言えるだろう。最先端の民族音楽。何を言ってるのか分からないだろうけどこれが事実だ。めちゃくちゃクオリティが高い。本当に素晴らしい。やばい語彙がない。でも良いものって良いとしか言えないんだよね。
この作品より前だとちょっと色々な毛色を見せていて特徴的な部分がある。時代によって結構やることを変えている人ではある。最初に聴くなら今作の『Talé』が一番取っ付きやすいのではないかと思って選んだ。サリフ・ケイタの声もエレクトロっぽさも民族音楽っぽさも全部美味しく頂ける。良いバランスだ。
現代の音楽シーンが抱える至宝だ。ぜひ聴いてみて欲しい。