CD Essay

好きなアルバムを1枚取り上げて語れるだけ語るブログ

たまには気取ってオトナになろう、Donald Fagenの『Sunken Condos』

Sunken Condos

BNJFって良いんだよ

Sunken Condos - Spotify

Blue Note Jazz Festivalの開催が今年も発表された。

今年は2日間開催でヘッドライナーはDonald Fagen(ドナルド・フェイゲン) だそうだ。毎年かなり良いメンバーを集めているのにチケット代金が安くて心配していたんだが、どうやらその心配はいらないらしい。一昨年の1回目なんてJeff BeckPat Methenyが出るのに1万ちょっとだった。良いのかって言いながら観てた。

さて、せっかくだからDonald Fagenについて書こうと思う。でもあの超名盤にしてオーディオオタク達のバイブル、Nightflyについてはみんな書いてるし知ってるはず。しかも管理人は捻くれてる。ということでNightflyから30年後の2012年に発売された『Sunken Condos』を取り上げよう。

 


Donald Fagen - I'm Not The Same Without You

 

オトナの教科書

ドナルド・フェイゲン - Wikipedia

ドナルド・フェイゲンは元々はSteely Dan (スティーリー・ダン)というバンドのボーカルだ。Audio-Oriented Rock、略してAORの第一人者だ。商業的なラウドなものではなくオーディオ的な音を重視したロックというものだ。オトナ向けの落ち着いた感じだ。

そう、オトナだ。大人ではない。キマっていてカッコつけてて夜はおしゃれなバーとか行っちゃう、背伸びしてる感じ。 そういう気取ろうとしてるカタカナで書くオトナだ。スティーリー・ダンにはそういうイメージが付き纏う。あるロックバンドを描いた映画では「お前はスティーリー・ダンみたいになりたいのか?」という言葉があった。そういう見られ方だ。わかりやすい愚直なロックではない。ちょっと斜に構えたロックだ。

でもさ。良いじゃん。気取ろうよ。かっこいいじゃん。よれたスーツで大衆居酒屋しか知らないままおっさんになるよりさ、ビシっとスーツ決めて落ち着いたバーに慣れた感じで入るオトナになりたいじゃん。かっこよくウイスキーのグラス傾けてたいじゃん。今はそれが場違いでも、いつかそういう場に似合うオトナになりたいじゃん。

だから個人的にはスティーリー・ダンも、もちろんドナルド・フェイゲンも好きだ。「スティーリー・ダンみたいになりたいのか?」と言われたら「なりてえよ!」って言い返す。ウイスキーとか飲めないからハイボールが限界だけど。

脱線しかしてない気もするがスティーリー・ダンドナルド・フェイゲンはそういうイメージだ。ちなみにどちらも名作揃いだ。知らないならスティーリー・ダンのAjaとドナルド・フェイゲンのNightflyを聴いてカッコつけよう。

 


Donald Fagen - Slinky Thing

 

聴きやすい音像でリラックスできるカッコよさ

さて、Sunken Condos についてだが。まず言えるのは音質は悪くない

Nightflyの音質が当時としては良すぎたのでそれを期待している人は多いだろう。確かにそれと比べると音の方向は違う。だが、決して音質は悪くない。というか今聞いたら間違いなくSunken Condosの方が良い。30年以上前のNightflyに比べたらどの音も遥かに高音質でクリアに録れてる。

では、なぜ悪いという印象を持つかというと、低音の抜けが悪いという一点に尽きる。まあ全然悪くないし、むしろ適正なのだがNightflyと比べるとまあ確かに低音が手に取るように聞き取りやすいというわけではない。

Nightflyの音はくっきりはっきりし過ぎているのだ。そしてオーディオオタクと呼ばれる人達はそういう音を求めている。確かにその欲求に答える音ではないが、だからと言って評価を下げるというのはお門違いも甚だしい。曲全体だとよっぽど良い音である。ベースとドラムがしっかりボトムを支えた上でビブラフォンなどが綺麗に響く。美しいバランスだ。リラックスして聴ける。Nightflyは音がはっきりし過ぎて聞き疲れしそうなものだが、それと比べるとだいぶ聴きやすい。音圧戦争にも我関せずの本当に聴きやすい音だ。

曲は相変わらずのドナルド・フェイゲンだ。あまり冒険はしていない。2012年の作品なのに全てアナログ楽器だ。全員が自分で演奏している。そういう点は新しいのかもしれないし、相変わらず引くほど上手い人が揃ってる。そうした引くほど上手い人がテクニックをひけらかさずに、渋くかっこよくオトナにキメている。

コード進行やスケールの取り方などはドナルド・フェイゲンらしい。おしゃれで複雑なコード進行を少ない音数にすることで難解に聞こえないようにするテクニックは健在だ。ただのブルース進行も彼の手に掛かればおしゃれにキマる。流石である。

 


Donald Fagen On Letterman

 

オトナな気分になりやすい1枚

流石のクオリティだ。超名盤Nightflyばかり取り沙汰されるが忘れてはならない1枚だ。好みはあるし、求めているものと違うということもあるだろう。しかし、それと作品が良いかどうかとは別である。もちろん自分への戒めとしても心しておかねばと思う。

言いそびれてるが管理人はこのアルバムが好きだ。難解さがなく軽いタッチで明るい曲が多い。斜に構えてオトナな気分になろうとして選ぶ時に、聴きやすくて斜に構えやすい。お手軽にオトナ気分になれる感じだ。
そんなだからちゃんとしたオトナになれないのだろうか。ウイスキーは飲めないなあ。