Blood Orangeがサマソニに来るんだから『Freetown Sound』は聴いとこうな
今年のサマソニで絶対観るべき人
Freetown Sound by Blood Orange on Spotify
洋楽オタクの去年のベストアルバムに高確率で入ってたアルバムがある。それが今回の人、Blood Orangeの『Freetown Sound』だ。前作『Cupid Delux』も一部の洋楽オタクをざわつかせていた作品なのだが、今作は完全にみんなで大騒ぎだった。一時期は口を開けばこのアルバムの話しかしてなかった気がする。
そんな洋楽オタクが惚れ込んだBlood Orangeがサマソニに来る。一日目。これ、CD Essayのお墨付きで観たほうが良い。その理由を2016年の新作『Freetown Sound』から解説しよう。
女性アーティストの名プロデューサーだったりする
本名はDev Hynes(デヴ・ハインズ)という名前だ。RADWIMPSの野田洋次郎がillionって言ってるような感じ。昔はバンドやってたけど解散してからは完全にソロでやってる。バンドの時はギターも弾いていたので普通に上手い。ちなみに前はLightspeed Championっていう名義でソロしてた。途中でBlood Orangeに変えた。まあブラッドオレンジ美味しいもんね。
この人は女性アーティストのプロデュースをやたらしている。ビヨンセの妹、Solangeの2012年のEP『True』は全面プロデュースだ。あとSky Ferreiraのヒット曲『Everything Is Embarrassing』もプロデュースしてる。あとは日本でも大人気のカーリー・レイ・ジェプセンもプロデュースしてる曲がある。残念ながらみんなが知ってる曲ではないのだが『I Really Like You』の入ってるアルバムの『All That』だ。一応シングルだ。
彼の作風として美しいハーモニーを使ったミドルテンポの曲が多い。ポップミュージックにありがちな速いテンポでイケイケな感じではない。ちょっとおしゃれに、なんならしっとり聞かせるような曲が多い。いわゆるチル系と呼ばれるものだ。チルアウト(chill out)という熟語が由来だ。落ち着きとか安らぎとか、そういう意味だ。
そしてやけに唄が上手く聞こえる。可愛いだけじゃんって言われることが多い女性ミュージシャンを実力派なのだと思わせるのが上手い。アルバムに1曲あるだけでアーティストへの評価が大きく変わってくる曲だ。
そんな名プロデューサーのデヴ・ハインズが自分でアルバムを作ったのが今作である。
これがカーリーちゃんのいるやつ。可愛い…
例えば爽やかなチーズケーキのような
まず気付くのは女性シンガーの多さだ。もちろんデヴ・ハインズのソロなのだからデヴ・ハインズが唄うことが一番多い。しかし、やたら女性シンガーの参加が多い。
特筆すべきはその女性シンガーの使い方が非常に上手いことだ。個性を活かしつつチル系に綺麗にまとめている。上手い。ちなみにカーリー・レイ・ジェプセンも参加してる。もちろん決して『I Really Like You』みたいな感じではない。リーリーリーリーとか言ってない。めちゃくちゃオシャレ。カーリーちゃんってこんなにアンニュイな感じだっけってなる。ハスキーボイスで芸術的な印象すらある。すごく良い。インスタとかしてなさそう。
そしてセンスに溢れている。洗練されていて美しい。全体的にはR&Bやソウル系のブラックミュージックの雰囲気を落ち着いたチルミュージックにまとめている。ただ、黒すぎないのが面白い。ビートはエレクトロっぽくてすっきりしている。エレポップみたいな印象の曲もある。いわゆるブラックミュージックってビートのクセがあるし熱量が大きすぎたりする。もちろんそれが良いのも事実だが、ちょっと胃もたれするような感じもある。それをスッキリと綺麗にまとめあげているのだ。しっかりと濃厚で一口の満足感がありながら、スッキリとした余韻を持たせるから飽きが来ない。チーズケーキみたいだ。
チル系にありがちな退屈さもない。テンポが早くないし派手でもないのに聴かせられる。ちょっとずつ面白い音が入っていたり、そもそもメロディやハーモニーが綺麗に入ってるからこそって感じだ。飽きが来ない。完成度の高さがあるからこそ為せる技だ。
完成度の高さが凄まじい
そりゃあベストアルバムにも選ばれる。チル系の歴史に残るべき名盤だ。プリンスやカーティス・メイフィールドのような雰囲気を持ちながらスマートで洗練されている。都会的で派手過ぎない。素晴らしい作品だ。
去年が初の来日だったのだが、恵比寿ガーデンホールがソールドアウトした。それがサマソニに来る。広告の打たれ方を見ると多分夕方くらいの時間帯だろうから他と被って悩ましいってこともないと思う。
サマソニに行くなら是非、そうでなくてもこのアルバムは名作だ。