CD Essay

好きなアルバムを1枚取り上げて語れるだけ語るブログ

Dianne Reevesの『Beautiful Life』を聴いたけど、このおばさんは一生歌が上手いんじゃないかな

Beautiful Life

 

 最も重要なジャズボーカリスト

Beautiful Life - Spotify

ジャズのボーカリストってのは基本的にポップスなんかとは比べ物にならないくらい上手い。あいつら物凄いピッチ感覚してるからな。曲に合わせてその場で楽器みたいにアドリブするスキャットという技術が平然と行われてるんだが、これとんでもない技術だよ、冷静に考えたら。

その中でも最重要って言われてるのがこの人、Dianne Reeves (ダイアン・リーヴス)である。

もう既に大御所な立ち位置だから今までも良い作品を出しまくってるのだが、彼女の2013年の作品でグラミー賞を受賞した『Beautiful Life』がすこぶる良かったので記しておこう。

 


Dianne Reeves - Beautiful Life

 

5度目のグラミー賞

ダイアン・リーヴス - Wikipedia

このおばさん、とんでもなく歌が上手い。このアルバムを含めてグラミー賞を5回取っているのだが、それも全部『Best Jazz Vocal Album』部門だ。最優秀ジャズボーカルアルバムってやつだ。2000年から3年間はアルバムを出したら毎回グラミー賞獲ってるし。もはや全盛期のダイアンがCD出したらジャズボーカルアルバムは決定、くらいの勢いであった。

まあそれでも流石に毎回ってことは無くなってきた。

年齢ってのもある。やっぱりボーカルは生モノなので艶のある若々しい声っていうのは失われるものだ。その点では全盛期から10年経っているのだから辛い。高い音域は出なくなってくるだろうしロングトーンも厳しくなってくるだろう。

だがしかし、今作のダイアンは最高だった。

 


Dianne Reeves - Waiting In Vain (Live @ Lotos Jazz Festival 2014)

 

【朗報】Dianne Reeves、衰えてなかった

これでダメとか言うんだったらもう全員ダメだ。どう聴いても最高である。もう60歳の還暦だぞ。たしかに年齢を重ねたことは認めよう。パワフルさも全盛期と比べると劣っているかもしれない。ただ年齢を重ねた分の枯れた味わいみたいなものがある。声自体の魅力は上がっているのだ。あと劣ったと言ってもこれよりパワフルな人はいないぞ。とんでもない声量だぞこれ。相変わらずピッチの安定感はとんでもないしスキャットも最高である。なんだこれ。そりゃ神って崇められるわ。このとんでもない感じがアルバムにしっかり収められてるのだから良いに決まってる。

しかも曲もいい。

ただのジャズ一辺倒ではないところが良い。曲自体が新しいのだ。ちなみに上に貼った『Waiting In Vain』はレゲエの神様 Bob Marley のカバーだが良い感じにカバーしている。ジャジーでありながらレゲエに基軸を置いている。自然と身体が揺れる。

ジャズボーカリストがメインの作品は曲が古典的で面白くないことがあるのだが、ことダイアンに関してはその心配は全くいらない。曲の感性が若い。といってもシンセが入ったりしているわけではないのだが、若い。リズムの作りや音の選びが若いというのは間違いないだろう。非常に新鮮な感動がある。

あとゲストがとんでもなく豪華。ベースは Richard Bona Esperanza Spalding、ピアノは Robert Glasper 、スーパー盲目アーティストのRaul Midon 、更には現代最高のシンガーのひとり Lalah Hathaway まで参加している。なんだこれ凄いな。そら曲も新鮮な感じになるわな。

 


International #JazzDay: Dianne Reeves: "Tango"

 

現代ジャズボーカルのアンセム

とにもかくにも最高である。後ろの演奏隊がしっかりジャズしているところも楽しい。各人のソロが十分に充実している。にも関わらずダイアンのソロがやっぱり最高である。めちゃくちゃ良い。とんでもなくレベルが高いことをしている。

べたべたのジャズではない、どちらかと言うとフュージョンに近いのかもしれない。でも根底にあるものはきっちりジャズだ。アドリブのやりかたなんてやっぱりジャズだ。間違いなくジャズボーカルアルバムである。新時代感がある。

ちなみに、今年の5月に来日するらしい。めっちゃ行きたい。

まだまだ現役である。まだまだ期待し続けていこう。

 

Beautiful Life

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