CD Essay

好きなアルバムを1枚取り上げて語れるだけ語るブログ

Journeyと侍JAPANと恋心

フロンティアーズ +8(期間生産限定盤)

 

侍JAPANで流れてるあの曲、なんだ?

Frontiers - Spotify

野球の世界一決定戦、WBCがにわかに盛り上がっている。ちなみに管理人は筒香が大好きだ。筒香への愛で記事をひとつ書ける。が、CD Essayなんてタイトルでそんな事をしても誰も得しないので黙っておく。

あれはJourneyというバンドのSeparate Ways (Worlds Apart)という曲だ。2017年にロックの殿堂になる歴史的バンドだ。今回はこの曲が収録されている1983年の作品、『Frontiersの話だ。

 


Journey - Separate Ways (Worlds Apart)

 

世界一ダセェPV

ジャーニー (バンド) - Wikipedia

まじでダサい。観たことないなら観てくれ。80年代がいかに狂ってたかが分かる。なんだあのキメ顔。こっち見んな。一通り引いた後に笑えるレベルでダサい。

ちなみに、ニコニコでは世界で二番目にダサいってことになってる。でも代わりにいる世界一のPV Armi Ja Danny - I Want To Love You Tender - YouTube は200万再生だし、正直このアーティストはこれしか知らない。確かにダサいけど、局地的にこれだけダサい。いわゆる炎上商法みたいなもんだ。

だがしかし、今回のジャーニー様は3000万再生だ。しかもこの曲だけでなく他の曲も何千回と再生されてる本物の世界的アーティストである。やはり世界一はジャーニー。本当にクソだせえ。

と、一通り定番のディスりを加えたところで音楽の話をしよう。

ちゃんと聴くと曲は良いのだ。80年代丸出しの気持ち悪いリバーブのドラムとか、やけに気持ち悪いボーカルエフェクトとかあるけど。確かな実力に裏打ちされた曲の展開は面白いし、かっこいい。当時の流行りであるシンセにハードロックを加えた形式としてはお手本だろう。

そう、めっちゃ上手いんだよ。歌もめっちゃ上手いし。

実は彼ら、昔はプログレをやってた。プログレッシヴ・ロックPink Floyd とか King Crimson とかいるが。要するに上手くないとできない、やばいジャンルだ。平たい話、それだとイマイチ売れなかったからテコ入れとしてポップスやったら世界的なバンドになっちゃったよということである。昔プログレやってた名残がやたら上手いソロに現れているわけだ。

ちなみに、歌詞は別れた彼女に未練たらたらしてる感じだ。ハードな曲調に対して女々しい感じが逆にウケたのだろう。まあ野球のテーマ曲としてどうなのかと言われると、ちょっと微妙感があるのは否めない。

 


Journey - Faithfully (Official Video)

 

ハードなラブソングの帝王

このアルバムは実はジャーニーのキャリアでも名曲と言われる曲が2曲含まれている。ひとつは前述の Separate Ways であるが、もうひとつが Faithfully である。6000万再生でありジャーニーの曲でも一番の再生回数である。

ちなみに、邦題は『時への誓い』である。えっダセえ。酷いセンスだなこれ。いやでも、これ以上80年代の悲しき遺産に触れるのはやめよう。

分かりやすいバラードである。もう定番も定番である。ピアノから始まり少しづつ盛り上げる。メロディアスなギターソロを聴きながらソウルフルな声で畳み掛けるエンディング。もちろん歌詞は愛する人に永遠の愛を誓う内容だ。完璧である。80年代女子のハートをわしづかみである。

そう、このバンドはやたらと恋愛の曲が多い。まあもうこのボーカルの歌い方だったらそういう曲が良いだろうというのも分かるんだが、にしても多い。プログレをやっていたことからダイナミックな曲の展開が多く、かつ盛り上げ所の重厚さも非常に上手い。分かりやすく盛り上がる。そうしたダイナミックさが80年代女子の揺れ動くハート感があって良いのだろう。80年代女子の心とか知らんけど。現代女子のハートも知らんわ。トリセツとか破り捨てるわ。

誤解しないで欲しいのはこういうハードでドラマティックな曲調は他にもいた。Froreigner とか Asia なんかは大きな括りで見れば一緒だ。当時としては取り立てて真新しい曲ではない。だが、ここまで甘々な歌詞は初めてだった。ハードなのに甘々。がっしりした生地を油で揚げたとこに砂糖をぶち撒けた、ドーナツみたいなもんだ。このドーナツで脳味噌やられちゃった女子達の力でジャーニーは頭一つ抜けて売れたというカラクリである。

 


Journey - Send Her My Love

 

ひと夏の恋のような名盤

ハードでダイナミックな曲調に甘々の歌詞を乗せた完成形が今作である。それまでジャーニーはずっとスタイルを模索していたが、見事にターゲットの需要を狙いすまして大ヒットに繋げた。その手腕は本当に素晴らしいし、曲としてもクオリティは非常に高い。歴史に残る名盤と呼ぶにふさわしい。

だが、あまりに商業的過ぎたのだろう。メンバーで不和が起きた。ハード担当のメンバーが離脱したのだ。ハード要素が無くなってただ甘いだけの砂糖に女子のハートは満足できず、次作以降ジャーニーは急速に失速する。そうした急に盛り上がって急に消えるのはさながらひと夏の恋心のようだ。

しかし、昔の恋を思い出しても良いじゃないかなと。たまにはね。80年代丸出しの雰囲気も昔の事なんだと思わせてくれる。懐かしいと言いながら少しだけ感傷に浸るにはピッタリの作品なのは間違いない。

 

フロンティアーズ +8(期間生産限定盤)

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