サックス奏者のBob Reynoldsの新作がGuitar Bandって名前なんだけど最高
サックス吹きの新プロジェクト
Bob Reynoldsというジャズのサックス奏者がいる。
John MayerのバックバンドやSnarky Puppyへの参加など、近年めきめきと頭角を表していた若手の有望株というやつだ。Joshua Redmanに続く人材と言われる世代だ。
そんな期待のサックス奏者が新しいバンドを組んだのだがGuitar Bandというらしい。
おーけー、ちょっと待って欲しい。 どうした?
今までもソロ作を出してはいたけど、もっと、いわゆるサックス吹きらしいソロ作だった。それが突然ギターバンドとは。どうした。何があった。
今回はリリースされたてのそんな問題作『Guitar Band』を取り上げる。
若手有望株、揃い踏みの豪華メンバー
Bob Reynolds (saxophonist) - Wikipedia (英語版)
本人のWikipediaは英語版しかなかった。というか、英語ならあるのか。すごいな。
今回のアルバムの参加メンバーがこちらだ。
Bob Reynolds — tenor saxophone
Nir Felder — electric guitar
Mark Lettieri — electric guitar
Kaveh Rastegar — electric bass guitar
Robert “Sput” Searight — drums
まず目につくのは、キーボード不在だ。
ジャズの世界で鍵盤不在は珍しい。鍵盤っていうのは低音から高音まで出せて和音とメロディーも同時に出せる超万能楽器だ。ピアノのように雑味が少ない音はもちろん、シンセでもその幅広さは使いやすさ抜群だ。なにより、今の時代っぽい。それが不在というのはハンディにすらなり得るだろう。
それを踏まえてメンバーを見てみよう。
名前だけでパッとわかる人はそういないだろう。しかし、この人達は絶賛売れっ子のスーパースタジオミュージシャン集団である。簡単に紹介するが、正直とんでもないメンバーである。全員がセレブのお友達みたいなもんだ。
ベースは今やスーパーセレブになったBruno Marsのバックバンドだった人。ドラムはスーパースタジオミュージシャン軍団にしてグラミーを取りまくってるSnarky Puppyのメインメンバー。Kendrick Lamarのドラムでもある。当然2人ともべらぼうに上手い。
もうこれだけでリズムの鉄壁さは保証されてるようなもんだ。
で、問題のギターだが、すごい。
Nir Felderは多くの大御所と共演する若手最有力。とんでもない速さで譜面を埋め尽くす、さながらコルトレーンのギターバージョンのような事をやるテクニックの持ち主だ。ちなみにメインギターは$250の激安ギターだ。へこめ。
Mark Lettieriはドラムと同じくSnarky Puppyのメインメンバー。和音とリズムのセンスが尋常じゃない。ついでにフィルターを使った音作りも面白い。アーミングもできる。完全に新時代のギターヒーロー感に溢れてる。
普段ならピアノが担うべき部分をこの2人のギターが補うわけだ。しかも、2人ともいわゆる箱系のジャズらしいギターではなくストラトで。セオリー無視。めちゃくちゃである。これが企業の人事なら頭がおかしいと言わざるを得ない。
だが、この2人ならできる。この2人のためにGuitar Bandって名前を付けるのも頷ける。この2人のギタリストは正真正銘の化物だ。
即興による技術とセンスの殴り合い
この豪華メンバーでやったのは即興演奏である。大枠だけ決めて、細かいところはその場でメンバー全員が考えながらやる。技術とセンスがないとできない、神々の遊びだ。こんなの面白くないわけがない。
まず、やっぱりギターの2人が途方もなく上手い。よくもまあこんなに色々なフレーズが出てくるなと感心する。2人ともとんでもない次元でやってる。正直上手すぎてよくわかんないとこまで来てる。頭ン中どうなってんだ。いやほんとに。
けど、これに主役のサックスが食われてない。
これだけ上手い上に主張の強いギターを従えて、自分が主役をやってる。繰り返すが間違いなくギターの2人は名演をしている。ソロになったらテクニックの嵐だし、どんなギタリストでも参考にしたくなるフレーズで溢れている。なのに主役はサックスだ。ギターが最高に良いソロを弾いてても、その後にサックスが帰ってきたら急に主役を奪い去っていく。めちゃくちゃ良い。もう何が良いのか分からんけど良い。
ライブ録音らしく観客の声が入るの良い。邪魔しないのにこっちの気持ちをそのまま代弁してるような気になる。ミキシングの上手さを感じる。
それに加えて即興らしいアクシデントもあるのが良い。本当に全部収録してある。ドラムが完全に見失ったヒヤヒヤ感の後の復帰はセンスの塊みたいなことしてる。お互いのリカバリー能力の高さが伺えて感心する瞬間だ。
ドラムがロストするのはこの動画。ロストしてんのにカッコイイ。ずるい。
紛うことなき名盤である
CD Essayの記念すべき一枚目だ。はっきり言ってこのアルバムを聴いたから語りたいって本気で思って動き出したようなところもある。それぐらいには名盤だ。一枚目がこれで良かった。
凄まじい質の高さだ。ギタリストは必聴、サックス吹きも必聴。ベーシストもドラマーも必聴。っていうかもうみんな聴こう。これ凄いよ。
これがYouTubeに全編上がってる。オフィシャルで。良い時代だ。ただ音質とかの事を考えて管理人は買った。所有欲を満たすって最高。お布施とも言う。
新しい時代の技術の結晶だ。ぜひ聴いて欲しい。